花タンを終えて、淋しい気持ちでいっぱいです。
そして同じような言葉を共演者のみんなに貰って、つくづくいいカンパニーだったなあと、大成功だったなあと思っています。
花タン

にご来場くださいましたみなさま、ありがとうございました!!!
-お詫び-
『まずお詫びしたいことは初日土曜日の開演が30分もおしてしまったことです。そうしてそれにともなう受付対応の混乱、不手際、大変申し訳なく思ってます。その他の開演の押しに関しては、お客様が途切れなくご来場なさったためではありますが、みなさまの予定を狂わせてしまったこと、この場を借りて深くお詫びします。』
一日仕込みの現場で(通常2日仕込みです)装置が仕込み日の夜7時になっても到着しないというあたしの演劇史上初の大トラブルで幕を開けた花タン本番でしたが、最終的に内容的には大成功だったと言えると思います。演劇人なら、建て込みが初日の午後までかかるというトラブルがどれだけ致命的がご存知だと思いますが、稽古場で何度も転換稽古や早替えの稽古をやっていたこともあり、場当たり3時間(通常半日かかる。楽隊をいれればさらに4時間はほしい) ゲネなし、というスケジュール変更の中、みんな、あたしのことを信頼して舞台に立ってくれました。
舞台は正直おもしろかったと思う。それを肌で感じられたから、解散した今淋しいのであって、こんなすがすがしい舞台、終わって淋しい舞台は、高校2年の文化祭の「わたしは貝になりたい」以来で、そんな稀な感覚を、この花タンで味わえて本当に幸せだと思っています。
アンケートを読んでも、さおりが「厳しい意見もある」と言ってたが、かつてないほどに優しいアンケートばかりで、正直びっくりした。普通アンケートは匿名でも書けるため、めちゃくちゃな批判がけっこう混ざっているものです。
今回あたしがあたしに満足できたこと、それはカラーを全面に押し出せたことだ。もちろんその為、「こういうの嫌い」と思う人には完全についてこれない作りの部分もある。でも、「すべからくみんなに受け入れられるもの」は「人の記憶に残らないもの」だとあたしはこの数年で学んだし(ディズニーランドとカレーライス以外)、幾人かに嫌われてもいいやという覚悟もこの数年で身につけた。その上で判断をして演出をした。ゆえに「モカティーナ夫人」全開の舞台である。だからこそ、それを意外にたくさんの人が受け入れて評価してくれたことが嬉しいし、そうでない人がいても仕方ないと思う。
だからあたしは「こういうの好き」「あたしは嫌い」の比較の対象になりうるだけのカラーをそこに存在させられたことを誇りに思う。
あたしが働いてるお店もそうだ。好きな人は好き。嫌いな人はこない。
だからこそ、お店にはそのお店のことが大好きな人であふれている。
あたしの公演もそうありたい。あたしの舞台が好きな人が、それを楽しみに来る場所にしたい。だからこそ明確な演出にした。もちろんできるだけたくさんの人に楽しんでもらうこと前提でね。
池野先生(ピアニスト)が来てくれたときは感動した。まさにあの時代を生きた人で10代から進駐軍のピアノ弾きをし、日本のジャズ史に名前を刻んだ人。その人があたしに向かって言った。
「もう」
池野先生は静かに泣いていた。
「うれしくて」と。
池野先生が森川くんのピアノを聴いて、あたしたちを見て、そう思ってくれたこと、そこに答えがある気がして嬉しかった。
そして、あたしのためにピアノを弾きたいと言って弾いてくれた。
嬉しかった。芝居は時代を超えて人を繋ぐ。
そして池野先生は言った。
「批評はね、何かをやるから生まれるんですよ。何もやらなければ批評も生まれないんです。だからやったもん勝ちなんですね。だからあなたは素晴らしいんです」
池野先生の時を刻んだ顔が笑顔でその言葉を伝えた。
「がんばんなさい」そう聴こえた。やっぱりダメだしされたらしょげる。おもんないと言われたら傷つく。そんなあたしへのエールだった。
この人はなんでもわかってるんだなあ、と思った。
そして次の日のアンケートに
「自由劇場で見た『上海バンスキング』以来で一番おもしろかった /水商売・オカマ」という言葉があった。
どこにも書いていないそのワードをお客さまが書いたこと。
「上海バンスキング」
今日みずえが撮ったスチール写真を見て思った。この写真は確かに上海バンスキングみたいだ。絵じゃなくて空気。
あたしたちが愛した芝居の空気に似ている。
こんな小さなことでいいのだ。たとえエライ誰かにけちょんけちょんに言われても。
そんな風な具合で千秋楽を終えた。
あたしの芝居は千秋楽が一番良かったらしい。
そのへんの非力さ(アベレージがないこと)は反省。
開演が押したことも大いに反省。
楽日にPU-PU-JUICEのみんなが来てくれた。
舞台上から見える顔は険しかったので、あまり見ないようにしてしまったし、帰りもそそくさとみんな帰ったので、みんながどう思ったかはわからないけど、あたしはいつもPu-Pu-の舞台を楽しみに見に行ってるから、楽しんでくれていたらいいなと思う。
芝居は楽しむもの。見るほうも演るほうも。
それが劇団「モカティーナ夫人」の底に流れる血だ。
千秋楽は楽隊がこっそり小麦粉を持ってきてDDT。
あたしは上海リルの前に楽屋でかつらごとハンガーにひっかかって大爆笑。失敗も含めて、笑いの絶えない現場だった。
腹筋が痛くなるほど笑うと元気がでる。
踊ると楽しくなる。
歌うと幸せになる。
みんな笑って暮らそう。
たとえ困難が立ちはだかろうとも。
国に立ち退きを余儀なくされても。
装置がこなくても。
赤字でも。
それでも。
みんなおいでよ。わたしのホールへ。
住所は銀座よ、すずらん通り。
2008.10.3 演出家 モカティーナ・モカコ
我が演劇人生に一つ目の終止符を打って。
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