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2016年6月25日 (土)

執筆メモ「目」

このまま家に帰って号泣したら、一緒に住んでいるヨーコがあたふたして困ると思った。だから歩くことにした四谷三丁目から牛込までは、実際のところ、
心の澱を洗い流すように泣くにはとても短くて、
わたしは寺尾紗穂の「楕円の夢」のアルバムを聴きながら、
馬鹿みたいに行き場のない道を蛇行し続ける。

四谷から牛込の、直線に丘を駆け上がればいい道のりを、
馬鹿みたいに蛇行しながら、馬鹿みたいにずっと泣く。

あのね、彼女の目を見て欲しいの。
きっとこの状況を脱したいと思っていることに気づくから。

あのね、わたしの目を見て欲しいの。
きっとあなたを今、
心底必要としているのは彼女じゃなくてわたしだってわかるから。

蛇行してわざと遠回りしてみたけど、
扉は閉ざされていて、
もしも明かりが灯っていたとしても、今日からは寄らない扉であるのだけど、
やはりとても傷ついて、

磨りガラスに額をくっつけて泣いた。

もしも磨りガラスの向こうで寝ていたら、
その振動に気づいて、扉を開けて欲しいと思った。

けれどもちろん磨りガラスの向こうに誰もいないし、
もしいたら、額をくっつけている自分は、すべての状況をただ、悪化させていくだけ。それもわかっていて。
だからこれは、叶って欲しくない、妄想。

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ねえどうして。

気づいてほしいな。

わたしはあなたを、とても必要としている。

あなたが目を合わせない

ようにしているあの娘より、ずっと。

お願いがあるの。

彼女の目を見てあげて。

もう終わりにしたがっていることがわかるから。

お願いがあるの。

わたしの目を見て。

あなたを必要としていることがわかるから。

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もしあなたが、彼女の目を見ずに、
わたしの目を見つめながら、

これを続けてゆくことができたならば、

あなたは、わたしより、彼女を愛しているってことよ。

彼女を失いたくないってことよ。

失いたくないのなら、彼女と目を合わせて。

そして失う覚悟をしているのなら、

わたしの目を、ちゃんと見て。

わたし、あなたを、必要としている。

そしてわたし、あなたが思っているほど、強くない。


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