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2016年2月18日 (木)

『さらば!イチロー』レビイウ。

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まず、このタイトルが秀逸。次に、久々の石川戯曲であること。
石川シン(もとい伸一郎)は言葉遊びの天才で、
このさらばイチローには、自分が改名して「石川伸一郎」から一郎をさらば!したことにも掛かっているのだが、もちろん昨年大ヒットして直木賞も受賞した西加奈子さんの「サラバ!」を彷彿させる気配もあって、

そういうキャチーなセンスに本筋が負けないというか、キャチー先行のものって、
キャチーでしかなかったりするものが多いなか、
本筋の中でもちゃんと「さらば!イチロー」に帰ってくるあたりが、石川戯曲のすごいところである。

2014年度に行われた2本立ての公演のタイトルは、
「世界を崩したいなら」と「泣いた雫を活かせ」であった。
これ、逆から読んでもらいたい。
「しんぶんし」の要領で、これらタイトルが反転するのである。
わたしはこういう彼らのセンスが大好きなのだ。

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ねじリズムは、いちおう数々の演劇を観てきたわたしが、いま最も東京では面白いと思っている小劇場の劇団である。いまとなっては家族みたいなこいつらというか、もはやこいつらでしかないねじメンズなのだけども、わたしは芝居への愛が並々ならぬので、
身内だから応援したりはしないのだ。

わたしが執筆とバイトでぱんぱんのスケジュールの合間を縫って稽古場に行ってしまうのは、やっぱり「ねじリズム」がほんとうに面白く、すばらしい芝居を、しかも楽しんで、つくっているからである。楽しんで作ること、ほんとうにこれは大事で、いい大人になって芝居とかやってるんだったらもう楽しんでないと意味ないっしょ、とわたしは思っているのだ。
冷ややかな稽古場からうまれるプロフェッショナルとか、わたしは求めていないから。

けれど同時に「楽しんでやれる」理由として、役者陣のクオリティの高さとバランス、これは大事なことだと思う。
まず、めんさん(石川)だけでなく、祥ちゃん、岡田と劇団内(しつこく言うが岡田はパトスパックではある)に3人も書ける人間がいるなんてこんなことはまずない。
第4回?「鈍詰(どんづまり)」は岡田が書いたし(エンディングに「また会う日まで」が刺さったあの感じは忘れられない)、2014年の二本立ては祥ちゃんが書いた。
もちろん3人書ける人間がいるとみんなで書き足したりもできる。

 

次に、役者としてもねじメンズは素晴らしい。

自分が知り合いの役者の中で、すごくいい芝居をすると思う役者の名をあげろと言われたら、ほとんどがねじリズムにいる、または関与している、と言えると思う。

彼らがいなければすばらしい戯曲が「成立」しない。
一見コントのようなやりとりの中に心の機微がなければ、意味が出にくいむつかしい戯曲なのだ、ねじの戯曲は。役者の力が必要な戯曲だから。
だから戯曲だけをよその劇団に託しても、この仕上がりになるのは難しいだろう。
笑いに失敗するか、泣かせる部分がくさくなってださくなるかどっちかだと思う。

と、ねじリズム全体について述べておいて、わたしが言うなれば、

それでもわたしにとって「ねじリズム」とは石川戯曲であるべきものだと言うことなのだ。

ねじリズムの魅力ーー軽快なタッチと、ハリボテやカキワリの小道具たちをあえていじって笑いに変えることで成立していく面白さやテンポ、意味不明の踊りや音楽たち・・・が、ストーリーが進むごとに、観客がこれらすべてに意味があるのだと気づき始め、
最後はわたし名付けるところの「カタルシスカメハメハ—」に射貫かれて、
意味不明のダンスを観ながら泣いてしまう・・・というこの魅力は、石川戯曲そのものの魅力でもあるからだ。
(以下ネタバレあり)

売れないラジオパーソナリティのシン・イチローは、
たまたま番組中に仕掛けられた爆弾騒ぎによって急に注目を浴びることになるが、
その騒ぎもすぐ下火になって、番組そのものが打ち切られることになってしまう。

ストーリーはそのラジオ番組”オールナイトでやらかさナイト”で
「いなくなった恋人を探しています」と告げた女の子とそのアニキを軸に語られていくのだが、女の子にほんとうは恋人はいない。けれど引き下がれずアニキに嘘を重ねていくうちに、女の子はとんでもないテープを発見してしまう。
いまをときめくセカオカ(世界のオカマたち)のDJブラ(佐々木仁/もう仁くんのオカマ芝居ツボすぎる)の過去をあばくかもしれない!?
テープとなったそれには一休(イッキュウ)と名前が記され、
DJブラの過去をめぐってセカオカの周りは騒がしくなる。

この一件無関係に見えるふたつの事件が、すこしづつ繋がってゆく。

DJブラには過去を全部投げ捨てて、弟にギターだけを置いて(テープだけだったっけ?)故郷を離れた過去があり、シン・イチローには、突然自分の前から兄が去ってしまった過去があった。

芝居を観ている観客には、ふたりが兄弟だとわかるシーンがあって、
その後、シン・イチローの最後のラジオにDJブラが生出演する。

「なんでこのラジオに超有名人のDJブラさんが出てくれるんですか」

そうたずねるイチローにブラは答える。
このラジオ、好きでずっと聴いていたと。それから、

「もういろいろしゃべっちゃおーかなと思って」

DJブラにイチローは言った。
「じゃあまず、そのマスク取ってもらっちゃったりなんか、できますかね」

目の前にいるのが兄だと気づかないままイチローはそう言い、DJブラはマスクを取った。

このあとのシーンのめんさんの芝居がほんとうにすばらしくて、
彼(めんさん演じるイチロー)は、ラジオだけじゃ生活していけないからバーミヤンでバイトもしてて、その悲哀な感じやギリギリの感じのまま、マスクの下の兄に気づいて、
声が詰まったシン・イチローはその顔をリスナーにレポートできなくなってしまう。

「どしたの?いいなさいよ、はやくわたしの顔がどんななのか」

互いが兄弟との再会をいま「なう」でしながら、まるで別な人物のことのように、
dJブラは彼の弟のこと、シン・イチローは自分の兄のことを語る。

そこに再び爆弾騒ぎが起きて・・・。

またデマだろうという場内にシン・イチローは言う。
「違うんだ、今日はデマじゃない。だから逃げて」

最後の台詞はナレーションだった。

「この事件でひとりが死亡し、ひとりが逮捕された」


話をはしょっているので、あれだけど、
例の「いない恋人を探している」女の子は、あきらかサギみたいなホストにはまって犯罪に手を染めながらお金を貢ぐ。そのホストがトイレでシン・イチローとかばんを取り違えたというのがオチで、
死亡したのはそのホストで、逮捕されたのがシン・イチローということになる。

「さらば!イチロー」とは、
同性愛に生きてイチローという男としての、兄としての自分を捨てたDJブラと、突然兄を失い、そこから立ち直って生きるために兄なんかいないのだと自分ンに言いきかせたシン・イチローと、ふたりの心のさらば!つまりサヨナラの叫びだったのだ。

つまり、さらば!でありながら、その心の奥には「ほんとうはまた会いたい」がほんとうの叫びとして内包されているわけで、彼らはさらば!2度と会わないと叫びながら、ほんとうは愛していると叫んでいる。

だから、見終わってからこのタイトルを見直すと、胸がいっぱいになる。

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脚本とシン・イチローを担当しためんさんと。
シン・イチローが、ラジオ終えてバーミヤンに出勤するくだり、
リアリティあって笑えた!!
「だーから、バイト中に電話してくんなって言ってんじゃん」笑

ーーーーーーーーー

書ききれなかったが、ホストにはまり犯罪に手を染めた妹をそれでも心配しかばい続けたパンチパーマ—の兄(丸山正吾)の芝居はすばらしかったし、
(マルショウ、ひさびさのガチ芝居でしたな、頭パンチだったけど)

この事件を捜査している警官が、この兄妹が、親をなくしたときに起きたある事件の担当刑事であったことがわかるエピソードなんかもあって、人の関係は愛しく、そして悲しく、絡まっていく。濃いねじメンズの中にいるとどうしてもビジュアル担当に見えてしまう尊哉だけど(イケメンだからいいじゃないの)、うすっぺらいホストの悲哀みたいなのが最後の瞬間にぶわっっと出ていて、今回すごく、いい芝居だったんじゃないかな。

仁くんと祥ちゃんが安定のナチュラルさで芝居を支えてくれていました。
このふたり、できない役なんてあるのかな。
ほんとうに力のある魅力的な役者陣です。
飛び系の役者だけだとバランスとれないのよね。
それと自然な演技ってほんとうはいちばんむつかしい。
仁くんはこれからも2丁目担当なんだろうか。笑。

めんさんの戯曲は人間を、ひどく滑稽で悲しく、
そしてどうしようもなく愛おしい気持ちにさせる。
ここまで人を愛しく描ける戯曲家をわたしは知らない。
(わたしはデビュー前からめんさんはじめ、すばらしいものを書ける友人がいっぱいいたので、自分がまさか人より書くことに長けていると、考えもしなかったのダ)

そしてその戯曲を、泥臭い心の役者たちが高い洗練された技術で演じている。
この組み合わせこそが、ねじリズムという劇団の底力の凄さだと思う。

泥臭く熱くても、芝居ができなかったら、ねじレベルの戯曲(演じる難易度が非常に高い)はこなせないし、芝居が達者でも踏み込んだ何かがないと、あのメンツの中にいると造りものにみえてしまう。

個人的には今回客演の女優さんがすごくすごく!よかった!ねじ的だったし。
(あまり女を押し出さない役者の方がよいのです、ねじは)

「なんかブログ書くとかゆっていつ書くの?」

と言われながらいまになってしまいましたが、以上「さらば!イチロー」のレビイウ。
ちょうどねじからお知らせなんかもあって逆に!?いいタイミングじゃないでしょうか?

(ストーリー間違ってたらめんさん、仁くん、わたしまでよろ!一回みただけでここまで覚えてるって愛じゃないですかね!今回稽古場にも呼ばれてないわけですし・・・笑)

で!!!
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こういうことらしいので観てみました!
わたしのエモい、芝居感想文で、「さらば!イチロー」を観た気になっている人!

エンドロールだけでも味わってください(笑


そしてそして、これを読んで、ねじリズム観てみたいナ〜と思った人!!
次回公演、あります!!!(笑
(まじどんだけねじ推しなんだろうか、病み上がりにこの熱量でレビイウ)

くわしくはこちら!!!

http://ameblo.jp/nejirism/entry-12128706886.html

以上、遅ればせながらねじレポでした!!!

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(ちなみにこれは、わたしが大切にしている、贋作・蝶番のときの集合写真デス☆)
(いいよね?わたしのブログなんだから、わたしの写真も載せても・・・汗)

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コメント

モカコさま
ようやく拝見しまして、しごとからの帰り道、井の頭線にてうるうるしてます。
やっぱりモカコさんのことば、すきです。
ねじの素晴らしさも、役者さんとお話の素晴らしさも、
モカコさんの愛も伝わってきて、ありがとう、泣けてくる。
お兄ちゃんに会えたシン・イチローの石川さんのお芝居に釘付けで、
正面からみられる席に三回中二度すわりました。
演劇のあらゆることへの理解はミジンコのわたしがおこがましいですが、
ねじと客演陣とモカコさんと、皆さんのたいせつなひととが、
笑顔でしあわせであるよう願ってしまうくらい
だいすきですし
作品をたのしみにしています。
感謝と愛を

投稿: あかぎ | 2016年2月19日 (金) 21時45分

あかぎ様(ラパンヌさま!?)

おひさしぶりです!お元気ですか?

ブログ読んでくださっているのですね、うれしいです☆ 今となってはわたしにとって皆が家族のような存在ですが、最初にわたしとめんさんの人間関係(芝居的絆)があって、そこには彼の戯曲があったというところに、わたしはいつも立ち返るようにしています。そう立ち返って考えてみると、
ねじリズムには彼の戯曲がなくてはならないものだなって、思います(笑

投稿: もかこ | 2016年2月24日 (水) 16時44分

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