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2015年6月17日 (水)

映画「あん」

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ひょんなことから本日、携帯を家に忘れて、 天王洲アイルの寺田倉庫までの長い行きしなの電車で携帯をいじることはできなくなった。
しかしおかげで、ほんのしばし誰かや何かと電波的に繋がることを忘れて、映画「あん」のパンフレットを読みふけった。

気になっていた映画をさおりに誘ってもらって、それがちょっと特別なイベントだったので、終わった後になんと河瀬監督じきじきのトークショーもあった。
いや、語順が逆である。
「あん」があまりにすばらしかったので、そのあと河瀬監督を遠巻きに眺め、
どういう思いでこの映画を撮ったのかが聴けたことが、とても大きな財産だった。

「あん」の内容については皆に見ていただきたいのではしょる。
とてもすばらしかった、言い得ようもないくらいにすばらしかったことだけを伝えておく。

この数ヶ月考えていたこと。
世界ってなんだろうか、
人が「今」を生きるってどういうことだろう? 
そういうことを考えながら「うたタネ」をやったり、
文月悠光ちゃんと、互いの詩を朗読したりしてきた。
メメント・モリを書いたりなんかして。

そういうことがとても美しく、もっともっと純度高く、
要らないものを完全に削いだ形で丁寧に紡がれた珠玉の映画だった。

こういう作品、またこういう映画監督ーつまりひとつひとつ順撮りをし、オフカメラで、役者の芝居ではなくそこを生きる姿を映し抜いていく、本物と作りものの境目がわからないような物作りをする監督ーがカンヌで高く評価されて、
世界的にみとめられているというだけで、世界はまちがっていない、大丈夫、そう思えた。

神は細部に宿る。 この言葉が、さいきん頭から離れない感覚。
そういうことを考えながら大切な人や尊敬する人たちの仕事を見ている。
前半はそんなことを想いながら見た。そして思った。
細部に宿る神とは、実は神ではなくて、愛ではないのか、と。

たくさんのひとの想い、それらが丁寧に掬いとられ託し託されたりしながら、「命」のように、人がかたちづくったものの中に宿るのではないかと。
それはだから同時多発的な世界の声。
世界はこうして細胞分裂しながら命を宿り宿らせ、呼吸しながら生きている。 永瀬正敏がすばらしかった。 そして樹木希林という女優の、もう、すばらしいでは片づけられない圧倒的な存在。 そして河瀬監督。

10代の頃、芝居はこういう風につくるものだと思っていた。
役を生きる、というように。
だから花よりタンゴを演出したときも、役の状態での全く台本にはないシーンのエチュードをたくさんしたりなんかして。
高校の文化祭のときでさえ、役が感じた風を感じる、などと言って学校を抜け出し、遠く高槻あたりまで電車に乗ったこともある。

けれどたいていそれは、「役者気取り」の行動であって、
そういう無駄をたくさんしたからといって、結局はわたしなんかは素人だから、実際の台本上のシーンがよくなったりするわけでもなかったりなんかして(笑
シーンにはないシーンを脳内でいっぱいつくった結果、その重要な本当のシーンの稽古がおろそかになって本末転倒になったり。つまりはアマチュアだったのだ。笑
プロフェッショナルがともなって初めてそういう「ニュアンス」は生きる。
そのことを今はよく知っている。

それに、大人になるとともに、当然、そういう「風」や「匂い」的な準備をしなくとも、すばらしいものをつくりあげる芝居の現場もたくさん見てきた。

だから今ではそういうことは執筆にのみ反映されている。フィンランドを書くならとりあえずフィンランドに行こうか、とか、酒を書くときは酒を飲むとか、心や状態を添わせていく作業。

しかしパンフを読んでいると河瀬監督は、それがなによりも重要なことだと、徹底した芯がありそれを実行していて、そこがなんとも潔くかっこよかった。説得力をともなっているところが。

ひとりでやる執筆業とたくさんの人の手とお金と協力の中で撮る映画はまったく違うし、その環境の中でそういうやりかたを徹底する、そしてそれを徹底することを認めてもらえる河瀬監督の才気と感性と器。そしてそれに一流の役者たちが応じたときに生まれる、
すさまじい生々しさ。これらの集まりはひとつの奇蹟といえると思う。
その奇蹟にふれることができてとても幸せだ。

「あん」を見た人にはぜひパンフレットをじっくり読んで欲しい。

個人的には、凄まじい!!!!と思ったいくつかのシーンについて、
やっぱりその場にいた役者さんたちが「あのシーンは……」と語っていて、
その裏話が書かれていることも、とても贅沢だった。

最後に、印象に残ったセリフがパンフにやはり抜き出されていたので、それを載せます。
ネタバレではないですが、なにも知りたくない人は見ないようになさってください☆

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