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2014年10月 7日 (火)

La kagu(ラ・カグ)

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新潮社が、ザザビーとコラボし、新潮社の倉庫を改造して作った、キュレーションストア、

「La Kagu(ラ・カグ)」

すこし前にポストに内覧会のお知らせが入っていたので、今日ちら見してきました。

なんかけやき坂のTSUTAYAを思い出す佇まい。

中に入るとすぐに出版社とのコラボらしい、企画が。
作家さんたちが、なにかひとつのモチーフについて、ささやかな文章を寄せておられ、
それらを持って帰ることができます。

わたしは江國さんのと樋口さんのと、石田衣良さんのと、辻村深月さんのとを持って帰りました。ここのところ数日、自分自身へのいろんな苛立ちがあって、
穏やかならぬ心持ちでありましたので、
もちろんこのコーナーをいち消費者として純粋に楽しめたかというと、そうではありませんでした。が、同時に今日ここに来て良かったなとも思いました。

場内にはわたしは知っている新潮社の方たちがちらほらいらっしゃるけれど、
当然ですが、誰もわたしに気づく人はいません。

わたしは完全にいま、「文壇にとって透明人間」であったのです。

この場所で自分の透明度を再確認したことは財産といえた気がしました。

この6年間の結果がこれだと考えたとき、これからの1年1年をどう過ごしていくべきか。

そんなほろ苦い自問自答をしながら2階へ。
(あ、写真、ちゃんと店員さんに許可とって撮りましたよ☆)

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嗚呼。あまたの憂鬱を一瞬にして吹き飛ばすこの素晴らしい景色よ。
この景色を見た瞬間に、わたしは、わたしをわたしにしてくれた、いくつかの図書室を思い出しました。

守山小学校の図書室、
成基学園(塾)の図書室、
日芸の図書室。

その場所たちで読み連ねた本や、読んで忘れてしまった本、まだ読めていない本など。
それらがいっせいにずらりと並んでわたしを見ている。
わたしははじからはじまで、夢中で背表紙を眺めた。

最近の本屋では誰かの著作を一気に探したりができない。
たとえば太宰を読みたいなと思っても、2冊くらいしかなかったり。

けれどここには、驚くほどに全部があるのだ。

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あまたの中からわたしを吸い寄せた本たち。

「雪のひとひら」は一目惚れ。いまこれを絶対読むべきと。
ポール・ギャリコ。初めて知る名前です。

同時に同じ棚にあって、知っているのにまだ読んだことのなかった

「トーマの心臓」を。萩尾望都さんのです。

そして最近はまりだした太宰治の「人間失格」

さいごに「キッチン」

わたしがこれを読んだのは記憶が正しければ13歳のとき。
中学に通う電車の中で読みました。

おそらくこの本は、わたしが児童文学やミステリーやそういったものから、
つまり文芸と呼ばれるものに移行していく、
つまり大人の読書へと向かう、読書思春期の、最初の作品です。

13歳のときから読み返していませんからもう忘れてしまった。
たしかあのときは続けて「哀しい予感」も読んだっけ。

そんなことを考えながら原点回帰にこれを買いました。

帰りに喫茶店で「ゆきのひとひら」を開く。

ーーーーーーーーー

雪のひとひらは、この身をかくも美しくつくってくれたそのひとに、お礼を申し上げたい気持でした。また、一瞬のうちにかくもおびただしい雪たちをつくりだしながら、そのだれもがそれぞれ宝石のようにあいらしく、しかも一人としておなじではないなんて、
どうしてそんなことができたのか知りたく思いました。
これほどのいつくしみと忍耐とをかけて、ひとりひとりを仕上げながら、
同時にかくもあまたの雪たちを世にあらしめるなんて、そのひとは、よっぽどのおかたにちがいありませんでした。(雪のひとひら/ポール・ギャリコより)

ーーーーーーーー
ああ。なんて美しい文なんだろう。
ため息がでます。

これは休日の午後なんかの、時間にしばられずにのらくらと紅茶などを飲めるときにゆっくり読もう、、、
(本来の希望で言えば外にはしんしんと雪が降っていてほしい)

わたしはそう思って、この本をこの場所で閉じ、

「トーマの心臓」に没頭した。

少女の頃のように、いかにも自分がその宿舎にいて、彼等と同じ風の匂いを嗅いでいるような気さえしながら。そうしてなぜか、「アラベスク」という漫画と、それを読んでいたころ、
そして中学の裏門から下駄箱に続く、落ちた枯れ葉がみしみしとなる、あの道の秋の景色
を、すぐそばに感じた。

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