甘滴恋情事 第四帖 ”露咲き”UP!!
「君はなにを寝ぼけているんだね。これは提案ではない」
ふたりの様子を眺めながら、藤田春伊は絵の具を溶き始めた。君志乃は黙った。
「ぎりぎりのこと、極限を描くことができなければそれは藤田春伊の絵ではなくなるんだよ。そんなことは君もわかって、僕に絵を頼んでいるのではないのかね。そして君は、それだけ本気で、新しい店に人生を賭けているのではないのかね」
その言葉で君志乃は、すっかり先生の考えを理解した。
先生はあてずっぽうで、なんとなく粋元硯をここに呼んだのではないのだ。
これは狙いすました先生の意向なのだ。だからこそ、いまいち煮え切らぬ状態で時間が過ぎても、先生は怒ったり、機嫌が悪くなったり、しなかったのだ。
――先生は気づいている。わたしと硯の間にある、なにかしらに。
《甘滴恋情事 第四帖 ”露咲き”より》
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みなさまどうもモカコです☆
本日四帖がUPされています。よろしくどうぞ。
http://mf-fleur.jp/rouge/83/
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