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2014年2月 7日 (金)

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シュートは黙り、次の瞬間、あのグレープフルーツのように笑った。それは繭子の心臓を一瞬にして射貫いた。シュートは、間髪入れずに言った。

「ほんとに彼が君を好きならあんなことをするかな」
「あんなことって、何?」

 冷静に対応したいのに、頭に血が上ってしまう。心臓を射貫いた見えない彼の指は静かに細胞をえぐっていく。
あんなことって何? そう問いかけて、事実と妄想を織り交ぜたなら、「あんなこと」にいくつも心あたりのある自分にも気づく。いくつも心当たりのある自分に気づくことを知っていてこの人はわざとわたしにそう言ったんだ。

 彼の言葉は、ひとつの言葉の回りに、深度百メートルの穴をともなって、深い闇や濃い霧のように身体にまとわりついてくる。身体の中に不安が広がる。ぬかるみに足がとらわれそうになる。
 繭子は必死で耐えた。

「心が弱いね、スウィート。そんなんじゃまやかしに飲み込まれてしまうよ」
 シュートは言った。

「甘い甘いスィート」

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