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2011年9月27日 (火)

得体の知れないもの

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(前略)
こわい夢をみたり、怖ろしいことを考えてしまったり、得体のしれないものに心臓をつかまれたような気になったり。
口がなくなってしまえばいいのにとかも思う。
そしてああ、努力が足りないなあって思うの。

ひとを傷つけることは得意なのに傷がつくことには慣れてないって勝手だなあ。

そんなふうに人をまっすぐ信じて、思ったことを思ったときに言って、たくさんのひととたのしく、その歳までやってこれたって恵まれてるね

誰かにに言われて、ほんとうにそうなんだねって思ったりします。

でも、それでも。
得体のしれないものにわたしを掌握させておとなしく生きさせないために、わたしは執筆にいそしむ。
ちゃんと起き上がって2011年の9月を生きる。
いやだよ。
得体の知れないもの
おまえに負けて、わたしがいままでのわたしじゃなくなったら、それはおまえの思うがままだ。
それはかたくななんじゃない、頑固なんじゃない、
じぶんをかえりみないんじゃない。
だって「得体の知れないもの」おまえの思うままにわたしが生きたら、
扉を叩く人がいなくなるじゃないか。
わたしはそれでも勇気をもって扉をたたける人でいたいんだよ。

GAGAが言ってた。高校のとき、男の子たち数人に道端のゴミ箱の中に捨てられたことがあるって。ゴミにまみれて立っていたら女の子が「あんた泣くわけ?」って笑ったから、泣きたかったけどゴミだらけのまま笑った。
そのときはこの出来事がその後ずっとずっと自分の心に大きく影をおとすとは思ってなかった、ことの重大さをわかってなかったの。って。

そうゆうのが得体のしれないものだよ。

ほら怖いだろう? 
もっとこぶりに生きるんだよ、誰にもこころを開かず、にんげんなんかに期待せずにさって。おまえが信じたいよりもおまえの存在は代わりがきくもので、おまえが肯定したいほど、おまえは誰かのこころに何かを刻める人間じゃないんだって。おまえが何かを言ったりしたりすることは、みなをかきまわして、困らせはするけどけして救いはしないんだ。

でも知ってる。スーパースターだって、こんなふうに得体の知れないものに追い回されながら、それでも何万人の前に立ってじぶんをさらけだしているんだ。
なんてタフなんだろう。なんて尊いの。

いまのわたしはまだ努力がたりなくて、まだその手先は震えている。
もっと強くなりたいな。
とんがってとんがって鋭く強くなるんでなくて、山の上から下流まで流れてきたまるい石みたいにたいらになりたい。

よしもとばななさんが小説のなかで書いてた。
つらくなったら、つらくないところまで離れればいいのよ」って。

そうだね、いまわたしは、いろんなことから、つらくないところまで離れている。
執筆だけはそれを許さないけど。

なぜこういうことを日記に書くかって、扉をたたいていたいからだよ。
そしてわたしが作家である運命を、赤裸々に生きることとイコールにとらえているからだよ。大事なとこはぜんぶ隠して「ここなら見てもいいよ」ってやっている人間の言葉を誰がお金を出して買うだろう?だれが枕元に置いて寝る?
わたしが愛する作家さんはみんなじぶんを投げ出している、そうやって生まれた言葉を紡いでいる。だから枕元に置いて寝る。ノルウェイの森、神様のボート、姉さんと僕。

光を浴びて歌っている人だって、強いからそうできるわけじゃないんだ。
弱い部分を見せないスターのありかたもあるけどね、わたしはスターじゃない。
いち「おなじにんげん」の代表としてたまたま小説を書いている。

情熱大陸で伊集院静さんが言っておられました。

小説なんかで人は救えないんだよ、人の人生を変えたり、そんな力は小説にはないんだよ

でも。

読む人が世の中にはこんなつらいこともあるんだ、こんな痛みもあるんだ。
こんな思いをしている人間は僕だけじゃないんだ。そういうことを感じたとき、小説は誰かの痛みに寄り添うことができる。それを救いとよぶなら、僕は小説を書く意味として、誰かになんらかの形で救い、寄り添うものを書きたいと思う

人が幸せなとき「物語」や「読み物」は、単なるエンターテイメントにすぎなくなる(もちろんそれはそれで素晴らしいこと)。でも、ひとが今日を生きることすら苦しんでいるとき、
「物語」や「読み物」は人対本というマンツーマンで、誰かの心の奥にすうっと入っていって、何もできないけど寄り添うことができる。

じぶんもやはり物語を書く意味を後者の方に置きたい。

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