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2010年11月17日 (水)

ボヤージュ

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『わたしのお姉さんの周りにはすごい人がたくさんいます。お姉さんもすごいです。
お姉さんはピアノを弾きます。とっても素敵なピアノを弾くのですが、お姉さんいわく ”人前では指が震えて弾けないから、身内の前で弾けても無意味” なのだそうです。たしかにお姉さんが、たくさんのひとの前でピアノを弾いたのをわたしはみたことがありません。けれど、数少ない、親しいひとたちの前で弾くお姉さんのピアノはとても素敵で、たまに歌う歌には香りがあって、それだけでわたしはお姉さんを、とても雲の上のひとのように思うのです。
そして雲の上にお姉さんのともだちはたくさんいます。
学者さんや、有名なお菓子職人や、画家や、俳優さんまで。

雲の上にそれはまあたくさんのおともだちがお姉さんには居て、
お姉さんはこのたび、そのおともだちと、パリに行くことにしました。
お姉さんはわたしより8こも年上です。
お姉さんには素敵な彼氏がいて、けれどもお姉さんいわくそれは”もろもろをスムーズにするための契約の恋人”なのだそうで、くわしいことはわかりません。
髪をきれいに巻いて、いい匂いのするお姉さんをとりまく世界には秘密がたくさんあって、いくら背伸びをしても、わたしにはその秘密はあまりよくわかりません。

けれどもその秘密のおかげで、わたしも船に乗ることができるようになったのです。パリまでは船でひと月、16万円(※現在の100万)もかかります。
そのお金をふたりぶんも、どのようにしてお姉さんが調達したのかはわたしにはわからりません。けれどもいまこうしてわたしは、お姉さんとお姉さんの雲の上のおともだちと、こうして乗船を待っているのです。

お姉さんの雲の上のひとたちはわたしにとても優しいです。
けれども、わたしだけが、みんなと違うことをわたしはわかっているつもりです。
やさしくて気取らないおともだちも、ほんとうはみんなとてもすごい才能をもっていて、わたしには何もありません。

わたしには何もありません。

ほんのすこし気立てがいいくらいがとりえで、
ほんのすこし、音楽や、芸術や、そういう素敵なものに感動ができるくらいで、
わたしはとりたてて何もできません。
わたしはお姉さんやお姉さんのおともだちの才能に乗っかって、いまここで、みんなと居るだけのことなのです。
お姉さんがいくら、それは違うと言っても、わたしにとってそれはそのとうりで、そんなとき、血の繋がったはずのお姉さんをとても遠く感じます。
お姉さんのいい匂いや、きれいに塗られた赤い爪に、胸が苦しくなります。
同じように爪をぬっても、髪を巻いても、わたしはお姉さんや、お姉さんのともだちとはちがうのです。たとえ、同じ場所で同じ飲み物を飲んだとしても、みんなにはなれないのです。

けれども、たくさんの人がそれぞれの想いでこの大きな船に乗るのなら(荷物はひとり300トンまでオーケーなのだそうです)
夢と、ちいさな希望しかないわたしも、人混みに紛れて、旅を始めてもいいのかなと思ったのです。お姉さんやお姉さんのおともだちと、おなじ景色を見て、それでいつかお姉さんたちと同じことを分かち合える目の高さまで、わたしも背伸びしてみたい。
みんなと違って、小さなトランクに、いま、大切なものは何も入っていないけれど、いつか帰ってくるとき、このトランクに、なくしてはいけない大切なものが入っていたらいいなって思うのです。

300トンの荷物に紛れて、いまはお荷物でしかないわたしも、一人前の人間になれるように、みんなと一緒に出発します。旅立ちはドキドキします。
そしてこのドキドキにおいて、わたしはきっと、お姉さんやおねえさんのともだちの誰にも負けない、いっぱしのドキドキを持っているって、

そう思うのです。そう信じたいのです。』

オールウェイズに、めんたろうが来て、岡田が来て、みいき(妹/ねじ物販)が来て、まいち(ねじ映像)が来て、もちろんれいこさんがそこにいて、あやめが来て、なんと、別に父親まで来た日、まるで大集合、カオスの気分だった。
みんなでわいわい飲んで、歌を歌い、酔っぱらっていく彼らを見ながら、からまりまくった人の縁をすこし幸福に思った。わたしが大切に思っている個々の人たちがが、どういったわけかいまここで一緒くたに笑い、時を過ごしている神秘について考えた。
昨日、船パリの取材で言ったイタリアンの、優しくて温かいオーナーの彼も、
今日ここにいないふたりのねじメンバーも、みんなをここに呼びたい気持ちになったりして。無駄にここにいない仲間に写メールを送ってみたりして。
一緒にいなくても一緒にいるんだよ。そんなことを思ってるうちに、なんだかこのひとたちみんなが実は船パリの登場人物なのではないかと思い始めた。
これからどんな船旅を一緒にむかえ乗りこえていくかはわからないけど、
どきどきわくわくする乗船の前の気持ち。
でもきっと、このみんなでなら、いつか死ぬときにふり返っても、納得のいくような地図を描ける、そのためにみんな、ちょうど絵の具をもって集まったような。

♪好きな人やモノが多すぎて、見放されてしまいそうだ~

好きな人やものが多すぎて、泣き出してしまいそうだから、
船パリの冒頭部分イメージをいきなりノープランで書いてみたりして。

写真は、いち早く船パリモードの銀座キラ星のチラシ。ああ、こんな感じだよ、まさに。

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コメント

なんだか胸があつくなりました。
そして、最後の好きなものが多すぎて泣きそうになるその気持ち、めちゃわかります。
なんか、今がうれしすぎて、キラキラまぶしすぎて、いつまでこんなことできるのか不安で。。。
うまくいえません。
うれしいけど悲しい気持ち。。。

投稿: まちゃちゃ | 2010年11月17日 (水) 21時56分

まちゃちゃさん

ありがとうございます。
うれしいけど悲しい気持ち。
出発や船出はそんな感じがしますね。
好きなモノが多いことは幸せなことなのになぜ泣きたくなるのかな。

投稿: もかこ | 2010年11月19日 (金) 03時45分

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