明け方の相棒
ポジティブな意味なんだけど、あまりに行き詰まっているので強い味方を用意して執筆、正確には執筆の準備に励んでいる。
強い味方とは蝶番を書いていたときにいつも使っていた、蝶番にも登場するマグカップ。それに今回あたらしくモンサンミッシェルで拾った石を加えて のラインナップです。
ううう。一年前に「ソメイヨシノ」を書き始めるにあたって、「すごいところに手をつけてしまった…」とは思っていて、それを春夏と書き進み、秋に
到達したところで完全な行き詰まりを見せた。
物語の中に潜む危険性や、感情や複雑を考えると、あたしの器量ではとても書きおとせない。昨日までねずみの飼育係だったのに、今日からワニの担当になったようなものだ。
でもこれは、蝶番を書いたときと似てる感覚だから。
「ぬけ」そうでぬけられない、届きそうで届かないステージに、どうすればたどりつけるか、もがいてあがけば、それが「ぬけ」たときに人生が変わ
る。
この作品は新潮社の作品だ。
新潮社はあたしの人生をかえる場所、なんとなくそう思っている。
まだ受賞するまえに担当のノーリー田中はあたしにこういった。
「生涯をかけて、あなたは書かれていくべきだと思います。たとえ今回受賞しなくとも」
そして本が出たあとにこう言った。
「中島桃果子という作家が世の中に出ようとも、世の中から消えようとも、わたしたちは一生あなたという作家と向き合っていくしあなたを裏切らな
い」
生涯をかけて向き合うと約束してくれた編集者は、あたりまえだが、ちょっとやそっとじゃ納得してくれない。
「腹筋と背筋合わせて100回しました。これが今のベストです。ふー」
と言っても許してくれません(笑
「てめえ…そんな程度か」みたいな感じ。
けれども秋編の直し(3かいめ)というか白紙に返った状態で思うことは、却下されてよかったということ。
ワニが怖いので、ということで5メートルほど下がってパフォーマンスしているわたしを見抜いてもっと近づけと言う。
(こわい…)
この作品が世にでるのは、もしも早く書き終えても2011の年始。
(6月に一冊 10月に一冊でるから、全体的に考えて2011になるだろう、とあたしは思っておいる)
この物語に潜むどう猛なワニを、傷だらけになってもわたしが乗りこなせたら、それは作家としての次のステージ。
きっとまた大きく人生が変わるだろう。
なのにあたしの今のレベルはねずみの飼育係(笑
かたわらの石を眺めていると不思議な気持ち。
こいつつい3ヶ月前までは、海の向こうの、遠い島にいたんだよな…。
それが今は港区南麻布で、駆け出しのモノカキの苦悩につきあわされている。
そして江國さんのなにが凄いかっていうと、
あたしはワニで手こずっているのに、
あのひとは、妖怪やら、化け物レベルのものをすいすいと乗りこなしているところ。まるで猫と遊んでいるかのようにね。
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