芝居三昧WEEK
実はこの週の前後、いっぱい芝居をみましたよ。
まず、
青年座「僕らは生まれ変わった木の葉のように」
http://www.seinenza.com/performance/gekidankyo/090908/index.html
作・清水邦夫
ということで非常に楽しみにしていた&出演の加茂さんが、
わたし学生時代の先輩で、当時から好きなお芝居をする人だったので、さらに楽しみにしていました。
がしかし、脚本が古すぎる&清水邦夫らしさがない。
別役実っぽいんですね。清水邦夫らしさがでれば、よき古き時代ものとしてよかったんでしょうけど、ようするに「新しい」んですね。でもそれが「新しかった」時代はもう二十年は前で(いいすぎかな?)たとえばあたしたちが学生時代なら、静かな演劇、不条理劇としてまだまだありだったかな…という感じ。
それでも10年は前ですからね。
役者さんがみんな上手いので、余計、他の台本だったらどうだったんだろう?とか考えちゃいました。
しかし、大きな劇団ていいなあと思う。
スタッフや、製作や、小屋や稽古場の心配がなく、充分に人数も足りてて、装置も照明も素晴らしいし、おたおたさせられることがない。プロの集団だなって感じました。
加茂さんはやっぱり素敵でした。この人は役者を続けていくべき人だと思います。
独特でいびつなところがあるので。ひとがひっかかる部分を残しておけることが、
役者として大切だと思います。それがわざとじゃだめなんだな。だから天分も必要なんだな。
って思うのです。あたしの好みですが。
あ~あたしの好きな作家リストに入っている清水邦夫なので、これは残念。
PATHOS PACK Vol.4『ユエナキ子』
http://www.theaterguide.co.jp/search_result/paid/013015.html
俳優の宇梶剛士さんが主宰する劇団で、だいたい年一回公演があります。去年も行きました。
Pu-Pu-Juiceの主宰、山本浩貴と、
あたしが天才だと思ってる俳優、石川伸一郎が出演してたので吉祥寺シアターまで行ってきました。
大切な人を亡くした人間が心の穴に落ちる話です。
最初の方、コロス(象徴的な群集)を上手に使って、野田MAPみたいではあるが宇梶ワールドでもあり、楽しめました。
ただ、ストーリーがやや哲学的すぎて、でも内容は誰もが経験のあることを表現してるので、もう少し具体的なところがあってもよかったかなって思います。
わたしも今「クラムボンと猫」で泡のように浮かんでは消える、記憶とも夢とも呼べる一瞬のぽかりぽかり、を描いているので、曖昧さはどこらへんまで?とか、わかりやすさはどこまで必要?とか勉強になりました。
なぜこう淡々と感想を書いているかというと、役者がみんなプロで、やるべきことがちゃんとできているので、なんかレビューみたいになっちゃうんですね。
あたしも30になり、まわりでまだ演劇やってるなんて言って続けてる人で、いまだに江古田ストアハウスで、パンツ一枚で牛乳一気飲みしてます、みたいな人はいないんだよね。
みんな確実にプロになってきてるからさ。
石川伸一郎は舞台でも素晴らしいけどやっぱ映画じゃん?と思います。
「ナマ石川を見よう!」みたいな感じで舞台に集客して、あとは映画に出て欲しいな。
カメラを通すと魅力が増すんだもの。けっこうフンギリのつかないフェミニンなヤツなのに、映像通すとほんとに伊勢谷に似てるんだもん、舞台出てるときは堺雅人に似てる。
こうきさんはなんか目立ってた。目立つって大事だよね、うん。いいと思う。
舞台が舞台である理由、つまり生でそこでやってる理由、それをくれたらあたしはなんでもいいんだけど、
この舞台では大きな蛇口が舞台の天井にくっついてて、「おもしろいセットだな」
って思ってたんだけど後半そこから水がじゃーっ!!って出るのね。
あのね、人って舞台は生だとか言いながら、やっぱり作りものだと思ってみてるから、
こういう「生々しい」ものが突然にやってくるとやっぱ感動すんのよ。
シーンが終わったあとも、ぴちゃ。ぴちゃ。って水滴が落ちててさ。
それがほんとに良かった。一番前でみたけど後ろからも見てみたかったな。
Orega Challege Vol.4 夏の穴
http://www.orega.net/index2/natuno_ana.html
これは我らがNさんが出てるわけで、
もう絶対見に行くでしょう!と行きました。
実は「ユエナキコ」を見た次の日にこれを見たのですが、
なんとも奇遇、
これも大切な人を亡くした人間が心の穴に落ちる話で、
こんなことってあるんだなと思いました。
とてもわかりやすい展開で、ある意味ベタとも言えたのですが、ユエナキコがちょっとわかりづらすぎたので、
そういう意味では親切だなと思ったし、最後はわかりやすく感動したかな。西村さんの芝居の素晴らしさに感嘆しました。「もたせる」ってこういうことだなって思うよ。他の人がしゃべってたらつまんないだろうなっていう長いセリフとかも、もたせちゃうんだもん。すごいナー。
Nさんはとっても綺麗で「これぞほんとの美」って感じでしたよ。美しいってすごいこと。
ちょっと美しいとかじゃなくてさ、もうめちゃくちゃ美しい、って、やっぱりこれも「もたせるよねー」です。なんかため息がでちゃった。落ち込みのため息じゃなくって「はー。きれいだー」みたいな。
二つだけおかしいセリフがあって、これは役者のミスではなくて作家のミスです。
違和感のある言葉が二つあった。普通そういうことをそういう場面で絶対言わない言葉があって、言ってる役者さんが言いにくいんじゃないかなと。
ここまで3つ芝居を、プロの芝居を3つ見てきて、これはちほの言葉を借りる形になりますが、芝居をやる側にとっていかに「いい作家・作品に出会うこと」が大切なことなんだなと強く感じました。これは自分が作家であることを忘れてというか、だからこそ自分は、書き手になるなんてまったく思ってなかったわけで、オリジナルを上演するなんてめっそうも!!って感じで、完成された台本「井上ひさし」であるとか「清水邦夫」であるとか「永井愛」とかを上演したいと思っていたのですが、2009年の今、それらはだんだん古くなってきて、ジャズのスタンダードのようなもの、やる理由が必要になってきたし、やっぱり新しく時代を切り取る作品が欲しい。
そういう意味で劇作家の乏しい時代であるのだということを痛感しました。
同時に、生き残ってきている劇団を考えても、本谷有希子なり、大人計画なり(脚本はクドカン)、ナイロンなり、若手でいうとイキウメであっても、筆力のある主宰がいるという観点から見ても、やはり台本なのだなという気がします。
かといって本谷有希子の劇作を他の劇団がやって、本谷有希子以上に面白いかというと絶対のりこえられないわけで、作家の優れた劇団は、役者が入れ替わっていつのまにか有名人ばっかりになってくし、Nさんや宇梶さんとこのように、いい役者を揃えられるところにはなかなかいい本がないという感じになるのではないかなあと思うのでした。
あと役者の魅力ってなんでしょう。やっぱり上手い下手じゃないんですね。
昔はへったくそなやつもいっぱいいたので上手い下手でわけれましたが、もうみんな上手い。下手なひとがいない。ここに書いたランクまでくると。
ところが次の日顔も忘れちゃう役者がいる。
なんか変な動きだったのに、次の日ネットで調べてしまう役者がいる。
だからそこらへんなんだろうなと。
猿ロックに月船さららさんが出てますが、さららさんは話し方も独特だったり、
ちょっとくせもある。なのに見ちゃう。知り合いだからじゃなくて。
その話をある人にしたら、その人はあたしの知り合いとは知らず、猿ロックを見て、
その日にネットでさららさんを調べたのだそう。
オーラって、魅力って、なんなんでしょうね。おもしろいね。
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